Late Spring: Criterion Collection (晩春)
作品データ リージョン:1 制作: Criterion 映像仕様: 4:3 音声仕様: Dolby Digital Mono (Japanese) 作品時間: 108分 画面比率: 1.33:1 CC: No 字幕: English
大学教授の曽宮周吉(笠智衆)は一人娘の紀子(原節子)と二人で鎌倉で静かに暮らしていた。紀子は早くに母親を亡くしたために父親の世話をし続けており、戦争中に病気をした事もあって独身のまま27才になっていた。自分が紀子の結婚の妨げになっていることが気掛かりでならない周吉は、実妹のまさ(杉村春子)が勧める再婚話を真剣に考えているようなそぶりを紀子に見せる。父親の再婚話に心を揺さぶられる紀子だが、まさの世話で見合いをし、周囲の勧めもあって次第に結婚への意志を固めてゆく・・・。 世界の名作映画を質の高い内容でDVD化しているクライテリオン・レーベルから、小津作品としては久々のリリースとなった「晩春」。原節子が演じる役名が同じ「紀子」であることから、「麦秋」そして「東京物語」と合わせて欧米では「Noriko Trilogy」とも呼ばれている作品の一つだ。 「晩春」は、淡々とした日常の中に日本的な精神美学を見い出した小津安二郎監督の代表的な家庭劇であり、嫁いでゆく娘を中心に日本の家庭を描いた小津作品の出発点ともなった作品である。嫁ぐ前の晩に父娘が語らいながら枕を並べるシーン、娘の結婚式から帰った父親が一人で居間に佇むシーンは日本映画史に残る名場面だろう。寂しさを隠しながら娘の幸せを願う父親は小津作品には欠かせない笠智衆、親元を去る娘の奥深い心情を表現した29才の原節子は本作で始めて小津作品に出演、まばゆいばかりの美しさを披露し、以降、小津映画の重要な顔となった。名脇役の杉村春子も存在感のある素晴らしい演技を見せている。 クライテリオンは、今回も小津の日本的な世界を思わせる洗練されたパッケージ・デザイン、クオリティの高い映像と音、2枚組の充実収録で大切に保存しておきたい一本に仕上げてくれた。 本編は、片面二層DVD-9ディスクに可能な限りのハイ・ビットレートでエンコーディングされている。オリジナル比率の1.33:1モノクロ映像は、35mmマスターポジと上映用フィルムから最新HDテレシネであるスピリット・データシネによってHDデジタルトランスファーされ、チリやキズは丹念に除去された。作品の古さからそれでも完全にクリーンな映像ではないが、ディテールやモノクロのグラデーションは驚くほど優れている。英語字幕はON/OFF消去可能であるため、字幕無しで違和感なく観賞が可能。音声はオリジナル日本語モノ。ヒス音やノイズは最大限に減少されており、セリフの聞き取りも全く問題ない。 オリジナルに最も近い形での再現を追求すると同時に、作品をより深く味あわせてくれる付加価値があるのもクライテリオンの特徴だ。本DVDの特典ディスクには、ヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー映画「東京画」を丸々一本収録。「東京画」は1983年4月に東京で開かれたドイツ映画祭のために来日したヴェンダースが、敬愛する小津映画の中の東京の面影を探し求めて街をさまよい、目に付いた情景を思うままに記録した作品。花見やパチンコをする人々、蝋細工の食品サンプル工場、原宿で踊る若者達など小津作品の世界とはかけ離れた現代の風景とは対照的に、北鎌倉を訪問し笠智衆やカメラマンの厚田雄春へのインタビューでは小津作品への想いをたっぷり綴る。音声はヴィム・ヴェンダースによる英語ナレーション。ドイツ語の会話部分には英語字幕が付いているが、ナレーションには字幕収録はない。 また、本編ディスクには、ニューヨーク・フィルム・ソサエティー・オブ・リンカーン・センターのプログラムディレクター、リチャード・ペナによるオーディオ・コメンタリー、そして付属の21ページのブックレットには、ニューヨークのフリーペーパー"ヴィレッジ・ボイス"の映画評論家マイケル・アトキンソン、また日本映画研究の第一人者ドナルド・リッチーによるエッセイ(どちらも英語)を収録。この分野で権威ある人物による解説は難解な点もあるが、一本の映画を単なる娯楽ではなく研究対象であり芸術作品として扱うDVD製作者のレベルの高さが伺える内容だ。 なお本DVDは北米向けのリージョン1限定のため要注意。
2006/08/29
| 今週の新作 | 近日発売 | ジャンル・サーチ | RSSフィード | プライスダウン | スペシャル・セール | うわさのうわさ | 映会話 | 隠しメニュー集 | アートワーク・ギャラリー | オススメ作品 | ディスク・レビュー | リージョン説明 | DVD用語集 | リンク | ご注文方法 | よくある質問 | ファンタシウムについて | 編集後記 | サイト・マップ | ホームページへ |