White Light / Black Rain: The Destruction Of Hiroshima And Nagasaki (ヒロシマナガサキ)
作品データ リージョン:1 制作: HBO 映像仕様: LBX 音声仕様: Dolby Digital Stereo (English) 作品時間: 86分 画面比率: 1.85:1 CC: Yes 字幕: None
「1945年8月6日に何が起きたか知っていますか?」 渋谷の街角で、8人の若者にこう質問する映像から本作は始まる。"White Light / Black Rain: The Destruction Of Hiroshima And Nagasaki"(ヒロシマナガサキ)は、広島原爆の日に合わせ、2007年8月6日にアメリカの大手ケーブル・チャンネルHBOで放映されたドキュメンタリー映画だ。日本では2007年7月から全国で順次公開されている。 在米日系三世のドキュメンタリー監督・スティーヴン・オカザキが、14人の被爆者と原爆に関わった4人のアメリカ人の証言をまとめたものだ。オカザキ監督はこれまでにも「生存者たち」「マッシュルーム・クラブ」と、原爆に関わるドキュメンタリーを撮り続けており、「ヒロシマナガサキ」は25年の歳月を費やして500人以上の被爆者を取材したうえで丹念に製作された。 原爆を投下した人々と被爆した人々の当日の体験とその後の人生を、インタビュー、記録フィルム、被爆者の描いた絵画を交えて綴る。 本作の最大の特徴は、日米双方の体験談を公平な視点でドキュメントしていることだろう。ナレーションは一切入っていない。語り手に委ねられたインタビューは、「演出をするのではなく、語りたいことを語ってもらった」という監督の方針があるのだ。記録映像が証言内容にぴったり沿ったものばかりなのも、そのためだろう。 被爆者の体験談は、原爆がもたらす大量死のすさまじさ、そして生き延びたとしても人間としての幸福を奪い取ってしまう恐ろしさをありありと伝えている。監督は実際にインタビューした100人以上の中から、原爆体験をまるで昨日のことのように明確に語ってくれた人たちを選んだという。 被爆者たちは家族が死んでゆく悲しみに耐えて生き、後遺症と社会的差別に苦しみながら生き続けた。焼ける家の下敷きになって死んだ弟を持つ「はだしのゲン」の作者・中沢啓治氏、体中に残る深いやけどの跡を見せる男性、指が曲がり顔中に整形の跡のある女性。みな死ぬほどの苦痛を味わっている。涙なくしては聞くことのできない悲惨な経験ばかりだ。 原爆投下に関わったアメリカ人として、兵器検査技師、起爆装置を開発した科学者、軍の科学調査員、空軍パイロットの4人が登場する。彼らは、当時の任務にどう関わり、原爆投下をどう観察したか、率直に話している。 またアメリカ側からの貴重な映像も織り込まれている。敵国日本に関するプロパガンダ映像 "The Enemy Japan"、被爆者を身体調査した記録フィルム、平和活動家の谷本清牧師と原爆乙女が渡米した時に出演したテレビ番組などがある。 アメリカの視点には、「原爆は戦争をより早く終結させた」という考えが根底にある。が、注目すべきは、原爆を投下した人々からも、その脅威と将来の核使用の危機が語られているという点だ。 ひとりの元空軍パイロットが言う。 「イラクに原爆を落せばいい、なんて言うバカがいるが、核兵器がどんなものか知らないから言えるんだ。知っていたらそんなこと言えるわけがない。」 本作品が原爆の日にアメリカのケーブルTVで放映されたのは、意義深いことだ。地球上に広島原爆の40万倍の核が存在するいま、核開発へ警鐘を鳴らす作品として、世界で共有すべき一本だろう。 本DVDは、初回放映の翌日に発売された。英語音声の部分には字幕はないが、大半は日本語のインタビューが占めているので観賞にはそれほど困難ではないだろう。日本語インタビュー部分には英語字幕付。なおクローズド・キャプション (CC) の収録があるので、CCの表示が可能であれば、英語の部分の理解も多いに助けられるだろう。 幅広いジャンルで質の高い映像を作り続けているHBOフィルムの製作により、本作の映像クオリティはドキュメンタリー作品としては際立って優れている。DVDはクリアーで発色の美しい高画質に仕上がっている。1.85:1アナモルフィック仕様。 なお残念ながら本編以外の特典映像の収録はない。リージョンは、北米向けのリージョン1限定のため要注意。
2007/08/21
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