The  Sky Crawlers (Blu-ray)
(スカイ・クロラ）

作品データ
リージョン：ALL
制作： Sony Pictures
映像仕様： LBX
音声仕様： Dolby Digital TrueHD 5.1 (Japanese), Dolby Digital TrueHD 5.1 (English), Dolby Digital TrueHD 5.1 (Portugese)
作品時間： 121分
画面比率： 1.78:1
CC： Yes
字幕： English, Spanish, French, Portuguese

舞台は世界平和が達成された後の架空の国。そこでは人々が平和と幸福を実感するため、戦争請負企業によるショーとしての戦争が行なわれていた。戦闘機に乗って戦うのは、思春期のまま大人になることができない通称「キルドレ」たち。戦死する以外には死ぬことができない彼らは、戦うことで生きている実感を見出していた。
ある日、ロストック社の元エース・パイロットのクサナギ・スイト（菊地凛子）が指揮官を務める前線基地ウリスにカンナミ・ユーイチ（加瀬亮）が赴任してくる。それ以前の記憶がないユーイチに、スイトはまるで彼を待ち続けていたかのような視線を注ぐ。そして二人の間には切ない恋が芽生えるが、愛することにも生きることにも実感のないまま、彼らはただループする日常を繰り返していた。やがて、「ティーチャー」と呼ばれるラウテルン社のパイロットに仲間の一人が撃墜されてしまう…。

アニメ界の巨匠・押井守監督が森博嗣の原作を独自の世界観でアニメ化した「スカイ・クロラ」が2009年5月、米国盤DVDとBlu-rayで登場。「攻殻機動隊」以来米国でも多くのファンを持つ押井守監督だが、本作は北米ではニューヨークでの特別スクリーニングとトロント映画祭での上映に留まっており、待望のDVD/Blu-rayリリースとなった。

今回のBlu-rayは熱烈な押井ファンはもちろんのこと、ちょっと観てみたいだけという人でも満足感のあるお勧めの一枚だ。静謐なトーンでやや一本調子で展開する作品は、緻密な映像とキャラクターの感情を重視した「世界観」がすべてを物語っている。まずはBlu-rayの美しい映像の本編でその世界観を満喫しよう。その後、特典の監督インタビューでテーマへの理解をより深め、ロケハン密着映像でアニメ化の原点を探り、音響作業メイキングで音へのこだわりについて知れば、その懲りまくった世界をたっぷりと味わうことができる。

先に発売された日本盤Blu-rayと比べてもはるかに充実度は高い。米国盤が唯一劣っているとすれば日本盤の音声がTrueHD 6.1chであるのに対し米国盤はTrueHD 5.1chだが、5.1chで申し分ない高音質に仕上がっており、一般家庭の音響システムでは6.1chとの差はほとんど感じられないだろう。
本編のほかに三つの特典映像が収録されて定価$34.95とお買い得感も大きい。また米国盤コレクターには欠かせない英語音声/字幕も付いているので英語学習にも利用できる。

1080p/AVC MPEG-4の映像は最高度の高画質で、空の青みの再現力にまず圧倒される。さまざまな種類の青を使った空の色はまばゆいまでの美しさで、空間の広がりはHDでこそ再現可能なものだろう。3Dで描かれた戦闘機や背景はテクスチャーやディテールが優秀で、2Dのキャラクターとの対比もくっきり明瞭に出ている。スピード感ある戦争シーンの細かな動きも圧巻。僅かに絵がにじんでいるように見られる部分があるが、もともとの絵がそうなのかノイズなのか判別できない程度。

日本語および英語TrueHD 5.1chは、ドッグファイトのシーンでフルに威力を発揮する確かな高音質。戦闘機のエンジン音と銃弾があらゆる方向に飛び交う。テーマ曲の旋律は繊細で美しい。日本語、英語ともセリフは明瞭だが、パイロットが無線で交わす英語の会話部分は意図的に篭った音になっているため、英語字幕を表示するといいだろう。（＊日本盤はこの部分に日本語字幕が付いているが、米国盤には付いていない）

字幕はほかに聴覚障害者用の英語字幕、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、音声はスペイン語5.1ch、ポルトガル語TrueHD 5.1chも収録されている。リージョンはオール。

収録の特典は以下の通り。

Animation Research for 'The Sky Crawlers' Featurette：ポーランドへのロケハン密着映像（約31分、日本語音声、英語字幕、HD収録）。日本で公開前にDVD化されたメイキング「カウントダウン・オブ・『スカイ・クロラ』」からの抜粋映像と思われる。
The Sound Design and Animation of 'The Sky Crawlers' Featurette：スカイウォーカー・ランチでの音響作業の密着映像（約32分、日本語音声、英語字幕、HD収録）。こちらも「カウントダウン・オブ・『スカイ・クロラ』」からの抜粋映像と思われる。
Sky's the Limit: An Interview with Director Mamoru Oshii Featurette：押井守監督インタビュー（約15分、日本語音声、英語字幕、HD収録）
BD-Live：BD-Liveのメニューがあるものの、現時点でコンテンツはまだ用意されておらずアクセス不可。
Previews：「Dragon Wars」「ダ・ヴィンチ・コード」「パッセンジャーズ」「未知との遭遇・特別編」の予告編。「スカイ・クロラ」の予告編は無い。

（＊特典映像のうち監督インタビューとBD-LiveはBlu-ray盤のみに収録、他の二つはスタンダードDVDにも収録されている）

2009/06/02