DVD Fantasium
米国版DVDオンラインショップ Shopping CartWish ListLog InAccount InfoContactHome
  Movie Dialogue Easter Eggs Artwork Gallery Editor's Choice Disk Reviews  
     
 
   
   
    第5話 「ファイト・クラブ」コメンタリー徹底研究    
           
      ストーリー:
遊びの殴り合いから始まった「ファイト・クラブ」という男だけのクラブ。それはやがて組織化され、厳しい規則を持つ秘密結社のようなものへと変貌してゆく。カリスマ的存在となったタイラー(ブラッド・ピット)は、クラブを危険な組織へと導いてゆく。




米国版DVDには、オーディオ・コメンタリーという特典がしばしば収録されています。これは、監督や出演者が映画の全編について解説をしているもの。DVD特有の複数音声の機能により、例えば音声1は英語、音声2はスペイン語、音声3は監督によるコメンタリーを収録するということが可能なのです。観る側は映画全編の映像を見ながら解説を聞くことによって、各シーンの隠れ意図や様々な工夫、笑える裏話などを知り、より深く映画を楽しむことができます。その内容は、監督がまじめ映画論を説いているもの、ほとんど出演者たちの座談会状態になり内輪ウケでわけがわからないものなど、映画によって実にさまざま。

今回は、そのコメンタリーの徹底研究です。4種類ものコメンタリー収録で話題の米国版DVD「ファイト・クラブ」。 このDVDの音声仕様は、

音声1 英語(ドルビーデジタルサラウンド)
音声2 英語(ドルビーデジタル5.1ch)
音声3 フランス語(ドルビーデジタルサラウンド)
音声4 デビッド・フィンチャー監督によるコメンタリー
音声5 デビット・フィンチャー、ブラッド・ピット、エドワード・ノートン、ヘレナ・ボエム・カーターによるコメンタリー
音声6 脚本のチャック・ポーラニックとジム・ウールスよるコメンタリー
音声7 プロダクションデザイナーのアレックス・マクドゥエル他3名のスタッフによるコメンタリー

という豪華版となっています。 ここでは、注目の音声5、フィンチャー監督と3人の出演者によるコメンタリーについて解説します。このコメンタリーは、フィンチャー監督、ピット、ノートンが互いに会話をしながら解説をしていますが、カーターのコメンタリーだけは、別に収録して挿入されたもの。そのため、カーターが前後と関わりのない内容を話していることがありますので注意。

これまでは英語が難しくてコメンタリーを聞いたことのないという人も、この解説を見ながら挑戦してみましょう!


   
    Clipping 1: まずはそれぞれの声を識別    
     
このコメンタリーは音声5(Audio 5)に収録されています。一番最初に "On this track you'll hear commentary by David Fincher, Brad Pitt, Edward Norton, and Helena Bonham Carter." というナレーションがあり、その後、エドワード・ノートンがタイトル映像について次のように話を始め、4人が順番に登場します。どれが誰の声か、最初に確認しておきましょう。


CHP TIME
コメント内容


1-1 0.38 エドワード・ノートン

Now, is it true that ..uh.. is it true that you had to present this title sequences in entirely separate budget from the rest of the film?


このタイトルシークエンスは、本編とは別予算だったって本当?

この低い声がエドワード・ノートン。このコメンタリーを通して一番多く話しているのがノートンです。



1-1 0.38 デビッド・フィンチャー

Yeah, this is one of the things that.. keep you on budget, they said.

そうだよ、常に予算を考えて欲しいと彼ら(スタジオ)に言われてね。


次に、ノートンに答えてこのように解説しているのが フィンチャー監督。本編の出来がよければ、細胞をモチーフにCGを駆使したタイトルロールを制作、出来が良くなければごく簡単なタイトル映像にするという、予算上の取り決めだったと解説しています。



1-1 1.02 ヘレナ・ボエム・カーター

Idon't know when I first got to L.A. before we start shooting, I thought, a week before.. no, two weeks, two weeks in rehearsal..
.

ロスに来たのは、撮影の始まる1週間前、いえ、2週間前ね、2週間のリハーサルがあったから。


ここでヘレナ・ボエム・カーターの登場。イギリス人のアクセントで、女性の声なのですぐにわかりますね。撮影の前にこのタイトル部分のデモ映像を観て感激したことなどをコメントしています。



1-1 0.38 ブラッド・ピット

It's a little dark, Fincher.


フィンチャー、(この画面)ちょっと暗いよね。


ここでやっとブラピの登場。ブラピはあまり多く話していませんが、この特徴ある声はわかりますね。ブラピはライティングが暗いとコメンタリーで何度か言っています。





   
    Clipping 2: コメンタリーを楽しむ    
     
いよいよ、コメンタリーのハイライトを紹介していきましょう!


CHP TIME
コメント内容

1-4 6.19 ブラピお気に入りのサブリミナル効果

I love using the subliminal advertising technique to introduce a character. (Pitt)


サブリミナルを使って人物を登場させていくテクニック、俺は好きなんだよね。(ピット)

この映画を通じて何度か、ブラピ扮するタイラーのサブリミナルが挿入されていることが話題になりましたね。コメンタリーではサブリミナルがあると、ブラピが「あ、サブリミナル!」と言ってくれるので、すぐわかります。ブラピ自身はこれをとても気に入っているようですね。



1-7 11.37 マーラ登場、この一言。

This is one of the great entrances. You can't get really along with an entrance like this. (Carter)


この登場の仕方、すごいでしょ。これには誰も馴染めないわよね。(カーター)

カーター扮するマーラが登場するシーンについて。"testicular cancer support group"(精巣ガン支援グループ)のセッションにやってきて、いきなり "Is this cancer?"(ここ、ガン?)って聞くなんてとんでもない!と笑いながらコメントしています。



1-7 15.14 ブラピも認めるノートンの演技

You know that's how focused I was in the moment. (Norton)


それだけこの瞬間に集中していたってことだよ。(ノートン)


You are good! (Pitt)

さすが!(ピット)

サポート・グループのセッションでの1シーン。「話がある」とノートン扮する主人公がマーラに声をかけます。そのとき、マーラはカップについでいたコーヒーを止めることができず、コーヒーがカップからあふれてしまう!これは演出だそう。この事実、演技に集中していたノートンは全く気づかなかったそうです。そこで、ノートンが自分は演技に集中していたから、とコメント。



1-8 20.23 ブラピは二役演じていた!?

No one's ever caught that. (Pitt)


未だ誰も気づいていないよ。(ピット)

ノートン扮する男がホテルのベットに座り、TVでホテルの案内映像を見ているシーン。ここで、たくさんのホテルのボーイさん達が "Welcome!" と言ってポーズをとる映像がTVに映し出されます。なんと、このボーイさんの中にブラピがいます!ブラピ曰く、気づいた人はいなかったとか。さて、どこにいるでしょう?



1-10 25.45 ニーチェを体現したタイラーの無政府主義?

Tyler, on a, you know, on sort of a philosophic, political level, he definitely represents sort of, I think, very Nietzscheian impulse toward the idea of nihilism as a practical approach. (Norton)


哲学的、政治的なレベルで、タイラーは、実践としての無政府主義の考えに対して、まさにニーチェ的衝動を象徴していると思うね。(ノートン)

高層住宅の爆発のシーンを観ながら、ノートンがタイラーの暴力主義についてこんなコメントをしています。また、この爆発シーンについてこんな解釈を加えています。

What gets exploded in this film is the idea that nihilism is a very sexy when you're young and you feel frustrated, but that becoming a mature means recognizing the practical limits and some of the hypocrisies that nihilism lenses itself to. (Norton)

欲求不満になってる若い頃って、無政府主義にすごく魅力を感じるけど、大人になるってことは、無政府主義の限界とか、無政府主義そのものが映し出す偽善的なものに気づくことだっていう考え方・・・この映画で爆発させたのはそんな考え方なんだ。(ノートン)



1-11 30.37 くたばれマーサ・スチュワート!

I knew I wanted to be in this movie the moment that I heard we're gonna get to say "Fuck Martha Stewart." (Norton)


この映画で「くたばれ!マーサ・スチュワート」っていうセリフがあるって聞いた途端、俄然やる気になったね。(ノートン)

I was hesitated until I saw K-Mart commercials. (Pitt)

Kマートのコマーシャルを見るまでは、ためらいがあったけど。(ピット)


ノートン扮する主人公とブラピ扮するタイラーがバーで話しているシーン。ここでタイラーの "Fuck Martha Stewart." というセリフがあります。マーサ・スチュワートは、アメリカの主婦に大人気のライフスタイル・コーディネーター。プランニング、コンサルティング、マーサ・ブランド運営、著作活動など幅広く活躍中の女性です。当初、このセリフには抵抗があったというブラピも、Kマートのコマーシャルを見て、(多分、センス悪いCMだったんでしょう)「ま、いいか、と思った」とか。ノートンは、マーサ・スチュワートに実際に会ったら "handsome woman"(素敵な女性)だったとフォローしています。



1-11 30.51 ロージー・オドネル、許さんっ!?

Rosie O'Donnell just hated this movie. (Fincher)


ロージー・オドネルはこの作品をやたら嫌ってたね。(フィンチャー)

マーサ・スチュワートの話が出たので、フィンチャー監督がロージー・オドネルを話題にすると、とたんに怒り出すブラピ。ロージー・オドネルはコメディ系の女優ですが、司会およびプロデューサーを務めるトークショー "The Rosie O'Donnell Show" は全米で大人気。 自分の番組でこの作品を批判したらしく、ブラピは、「気に入らなかったのはいいとしても、TVでの事は許せない」と強く発言しています。



1-14 35.55 誤解を招きやすい作品なので、注意深く取り組みました。

When I first read it, it took a bit of explaining, I mean, I found it intensively funny in a dark way, but also felt there's a message here that could be misunderstood. I admired it for boldness, but I knew that I needed careful and responsible handing because it could be taken literally. I knew it'd be controversial, I knew it'd be misunderstood, but I knew that the position which all the main artists were working, the director, Edward, Brad.. they all had the right intentions on the right sense of they're operating at the right place. (Carter)


最初に(台本を)読んだとき、正しく理解するのにちょっと時間が必要でした。素晴らしいブラックユーモアだと思いましたが、それは誤解を招きやすいメッセージを含んでいることにもなります。その大胆さには敬服しますが、言葉通りに取られてしまう恐れがありますので、注意深く取り組まなければいけない作品だとも思いました。また、この作品については賛否両論になることも想像がつきました。でも、監督やエドワードやブラッドや、この作品の中心となっている人たちは、適切な意志を持って適切に取り組んでいましたね。(カーター)

このコメンタリーでは、この映画の評判について皆がそれぞれ自分の意見を話しています。カーターは、最初に台本を読んだときの印象として上のように述べています。ノートンは、「この映画は右翼的だと批判されたけれど、批判している人たちこそ、過激な左翼じゃないか。」などと話しています。



1-14 38.48 幻のブラピのセクシーショットがあった!?

Fincher chickened out. (Norton)


フィンチャーが、尻込みしちゃってね。(ノートン)

What are you talking about? (Fincher)

何の話?(フィンチャー)

There was a great shot where Brad went passed me and I flicked my flashing light up and we had a great shot of Brad's naked ass. (Norton)

ブラットが僕の横を通り過ぎた時、僕がちょっとライトを上に向けて、ブラットの裸のお尻を撮ったすごいカットがあったんだけどね。(ノートン)

I got to say it's too much. (Pitt)

そりゃ、やりすぎだよ。(ピット)


タイラーの家でのワンシーン。タイラーが自転車を乗り回しているシーンで、ブラピは下半身裸だったとか。自転車から転げ落ちるときにちらりとお尻が見えていますが、もっとはっきり映っていたカットがあったんですね。「やりすぎだよ」とコメントしているブラピは、うんざりという口調。フィンチャー監督もやりすぎだと思ってカットしたことを認めています。



1-15 43.36 暴力そのものではなく、生きていることをどう感じるかという映画

... And it isn't so specifically about violence for violence's sake, but it's more to do with the sensation of feeling alive. I mean, it's a desperate statement to say about society that people have got become so benumbed, and so dead spiritually and emotionally that they have to hit themselves in order to feel truly in a moment. (Carter)


この映画で表現しているのは、暴力としての暴力ではなく、もっと、生きることを感じることへの喜びなのです。人々が精神的にも感情的にも麻痺して、死んでいる状態だから、自分たちで殴り合わないとこの瞬間を本当に感じることができない、そういう切羽詰まった状態を表しているのです。(カーター)

暴力シーンについての批判がこの映画に対して多かったことについて、「もっともっと暴力的な映画は他にたくさんある」と、4人は口々に言っています。ノートンは同じ頃上映された「エンド・オブ・デイズ」はもっとひどいし、「ロッキー」シリーズはどうなるんだ、と言っていますが、ブラピ曰く、「ロッキー」では殴ることについて違う意味合いを持っていたし、暴力そのものの描き方が問題なのではなく、その背景にあるものを考えないと正しいメッセージをとらえることはできない、とのこと。



1-15 44.39 この映画、「卒業」と似たところがある。

If all stories are same in the end or if there is only a few core stories, I think this is the kind of just like The Graduate. It's a story of youthful dislocation and of the feeling of sort of entering the adult world and feeling about the adolescent value system that you're expected to engage in and trying to figure out the answer that the question of how to be happy. (Norton)


つまるところ大筋は同じだとして、中心となるストーリーがいくつかあるだけだとしたら、この作品は、「卒業」によく似ていると思う。これから大人の世界に入っていく不安、これから関わっていく大人の価値システムに対して感じる、青年期のアンバランスについての話なんだ。どうやったら幸せになれるかへの答えを探し出そうとしている。(ノートン)

一見、全く違うタイプの映画「卒業」と比較したノートンの映画論。ノートンはなかなかの弁舌家ですね。



1-17 48.39 ヌードは本物?

Those aren't my breasts. (Carter)


これは、私のバストじゃありません。(カーター)

タイラーとマーラのベッドシーン。このシーンでは、後のCG処理のために体中に点を張り付け、およそ12時間、カーマ・スートラのポーズをさせられたと言っています。どこか怪しいこのシーン、ブラピに言わせると「フィンチャー流のセクシー」がこれなんだそう。



1-17 49.55 お母さんには見せられない?

Oh my god.. Helena's mother is here and Brad's gonna be half-naked pulling up robber glove. (Fincher)


どうしよう、、、ヘレナのお母さんが来てて、ブラットが半分裸で、ゴム手袋をつけている。(フィンチャー)

タイラーがゴム手袋をひっぱり上げながら、部屋のドアを開けてノートン扮する主人公と話すシーン。部屋の中にはマーラの姿が。この謎のゴム手袋、ブラピのアイデアらしいですが、このカットの撮影現場にはカーターの母親が見に来ていました。スタンバイ完了、自分のイスに座ったフィンチャー監督が考えていたのが、どうしよう、ヘレナの母親にどう思われるか・・と、決まりが悪かったようです。実際は心配に及ばず、カーターの母親は大笑いしていたそうですが。



1-18 60.26 主人公の名前は「ジャック」

Narrator's name in the script is Jack. (Norton)


このナレーター、台本ではジャックとなっているんだよね。(ノートン)

ノートン扮する主人公、名前はあったのでしょうか?実は、台本上では便宜上ジャックとなっていたと明かされます。そう言えば、チャプター23で "I am Jack's complete lack of surprise" というセリフもありましたね。それと関係しているのかもしれません!?



1-23 81.21 ワーゲン・バグは使い古しカルチャーのシンボルなんだ。

If the Volkswagen Bug was the ultimate symbol of, sort of, used culture in the 60's or sort of the democratic car, the car for everybody, now that that generation has sold out all those values and all become corporate advertising executives and re-packaged the symbol of thief own youth movement and they're re-selling it to us. Brad and I were talking about it. We felt that the Volkswagen Bug was the perfect example of our generation having used cultural marketed to us something we should inspired to. (Norton)


フォルクス・ワーゲン・バグは、60年代の使用済カルチャーとか、民主的で庶民的な車の最大のシンボルでしょ。この年代の人っていうのはそういったものをみんな売っ払って、今は企業の広報部重役かなんかになって、自分たちの青春のシンボルをもういちどパックに詰めて、僕たちに再び売りつけているんだ。ブラッドと話していたんだけど、フォルクス・ワーゲン・バグは、使い古しのカルチャーをありがたがれと言わんばかりに売りつけられている僕たちの世代をよく表しているってね。(ノートン)

路上で車をぶち壊すシーン。撮影現場でノートンが「ワーゲン・バグって大嫌いなんだ」と言うと、ブラピが「俺も!」ということで、この車が壊されることになったそうですが、ブラピは、「今は気が変わった。あれはデザインがいいよ」とコメントしています。ブラピの心変わりにノートンはショックだった様子!?



1-24 83.06 暴力シーンにはこれがピッタリ?

It's only scenes of violence. (Pitt)


暴力シーンにしかないんだよね。(ピット)

Yeah, really horrible scenes of violence. (Fincher)

ほんと、ひどい暴力シーンにだね。(フィンチャー)

And I think its appropriate. (Pitt)

そう、それってすごくぴったりだと思う。(ピット)


何について話しているかと言えば、ペプシの自動販売機。デリでアルバイト店員を捕まえ、裏で殴り脅かすシーンがありますが、その背景に映っているのがペプシ・コーラの自動販売機。これはペプシから提供されたものらしいですが、これが置いてあるのはいつも暴力シーン。暴力シーンにはペプシがぴったりというブラピのコメントでした。





なるほど、なるほど・・・今回はコメンタリーの雰囲気をつかんでもらえたでしょうか。「ファイト・クラブ」のコメンタリーはこんな感じの座談会風に進んでいきます。饒舌ノートン流の理論あり、ブラピの過激発言あり、楽しい裏話ありといった感じで、この後、映画は危険なクライマックスへ・・エンディングについてのネタばれをしないよう、この続きは皆さん一人で楽しんでくださいね!


   
     
| ページトップへ |



Movie DialogueメインへMoviegoers目次へMovie Clippingsへ