ディスク#2: Godzilla, King of the Monsters(怪獣王ゴジラ): カイロ赴任の途中で友人の芹沢博士に会うため日本を訪れた新聞記者スティーブ・マーチン(レイモンド・バー)は、太平洋で謎の船舶沈没事故が続発していることを知ってその取材を始める。スティーブは山根博士らと共に大戸島に調査に行ってゴジラを目撃し、その後ゴジラが東京に上陸して街を破壊する様子を自分の目で捉えながら必死でレポートを続ける。が、ゴジラの驚異的な破壊力は東京に壊滅的な被害をもたらし、スティーブも大けがを負って病院に運ばれる。病院で恵美子とその恋人尾形に会ったスティーブは、芹沢がスティーブに何か重大な発明物を見せようとしていることを知るが・・・。
1954年に東宝が公開した特撮怪獣映画「Gojira」(ゴジラ)と、1956年のハリウッド編集版「Godzilla, King of the Monsters」(怪獣王ゴジラ)の2枚組セットが登場した。円谷英二の高度な特殊技術で怪獣特撮映画の金字塔となった元祖「ゴジラ」をハリウッド版と比較しながら堪能できるお勧めのセットだ。
本多猪四郎監督による「ゴジラ」は、ゴジラを核の落とし子であり人間が生み出した恐怖の象徴として描き、核批判の強烈なメッセージを含んでいた。しかし、ハリウッドは本作をオリジナルのままでは公開しなかった。アメリカ人新聞記者を主人公にして新たに撮影したシーンを追加、英語のナレーションと吹き替えで内容を大幅に変更し、上映時間を98分から80分にまで短縮したのが「Godzilla, King of the Monsters」だ。水爆実験による犠牲を訴える山根博士の報告や、「オキシジェン・デストロイヤー」が核の二の舞いになることを怖れる芹沢博士の苦悩をばっさりカットし、反戦メッセージが完全に失われてしまったのがハリウッド版である。当時まだ反日感情の残っていたアメリカでは日本映画の公開が困難だったばかりか、アメリカ人に都合の悪い部分はカットする必要があったのだ。
ゴジラが東京を破壊する特撮シーンは活かされたが、後から撮影されたシーンはちぐはぐに繋ぎ合わせられ、ストーリーは破綻してしまったハリウッド版。それでもアメリカのみならず世界各国で上映されて人気を呼び、ゴジラの名を国際的にする端緒となった。ハリウッド版がスピルバーグ監督をはじめ多くの映画人に影響を与えたことは、東宝版「ゴジラ」がそのドラマ性、メッセージ性を除いてもなお特撮怪獣映画の原点になり得るほど優れていたことを証明している。
その後、50年間アメリカ人は本当の「ゴジラ」を知らなかった。2004年、「kaiju」(怪獣)ブームに乗ってアメリカで初めて東宝版「ゴジラ」が劇場公開され、ファンは衝撃と共に「ゴジラ」の完成度の高さを再認識した。そして今回のDVDはアメリカのファンの間ではひときわ熱い注目を集めてのリリースとなった。
特典は、両バージョン共にオーディオ・コメンタリー、予告編を収録。加えてディスク#1には、本作のストーリー構築を辿ったドキュメンタリー"Godzilla: Story Development Featurette"(約12分)と、ゴジラの着ぐるみ製作メイキング"Making Of The Godzilla Suit Featurette"(約13分)がある。それぞれ英語音声で英語字幕、CCはない。
オーディオ・コメンタリーに参加しているのは「Japan's Favorite Mon-star」の著者スティーブ・ライフルと、怪獣関連誌「Japanese Giants」発行人のエド・ゴッジスゼウスキー。エド・ゴッジスゼウスキーは他の二本の特典映像でも解説をしているが、その圧倒的な知識量には驚かされる。すべてのシーンがどのように撮影されたか細部に至るまで知り尽くした二人による解説は、DVDコメンタリーの中でも屈指の内容と言えるだろう。