Chronicle: Extended Edition (Blu-ray-UK) (2012)
(クロニクル）

＜作品データ＞
リージョン： ALL
制作： Fox
映像仕様： LBX
音声仕様： DTS HD 5.1 Surround (English), DTS 5.1 Surround Sound (French), DTS 5.1 Surround Sound (Japanese)
作品時間： 84分
画面比率： 1.85:1
CC： Yes
字幕： English, Spanish, French, Danish, Dutch, Finnish, German, Norwegian, Portuguese, Swedish, Arabic, Turkish, Japanese

シアトルで暮らす高校生アンドリュー（デイン・デハーン）は、気弱な性格から学校では同級生からいじめられ、家では重い病気で自宅療養中の母親と、仕事もせず暴力をふるうアル中の父親と暮らしていた。そんな生活のなか、アンドリューは父親から虐待を受けている事実を記録するため、ハンディカムで自分の日常生活を撮り始める。
ある晩、廃墟となった農家でのパーティに行ったアンドリューは、従兄弟のマット（アレックス・ラッセル）、学校の人気者スティーヴ（マイケル・Ｂ・ジョーダン）と共に、裏山で見つけた大きな穴に入って行き、その先の洞窟で謎の閃光を浴びる。それ以来、なんと超能力を持ってしまった三人。最初は小さないたずらで楽しんでいた彼らだったが、次第に能力を強化させてゆく。やがて、学校でも家でも追い詰められたアンドリューが暴走を始め…。

現時点で日本未公開ながら、本UK盤Blu-rayには日本語音声・字幕の収録（＊注）がある"Chronicle"。ぜひ日本語字幕付きで楽しみたい。劇場公開バージョン（84分）に加えて、未公開シーンを含むエクステンデッド・エディション（90分）が含まれているのも嬉しい。（米国盤Blu-rayの方には日本語の収録は無いので要注意）

本作はアメリカでは2012年2月に公開され、低予算ながら週末興行成績トップを記録したSF映画。公開時に観た時には映画館は高校生でいっぱいだったほど、若い世代には人気を博した作品だ。

「クローバーフィールド／HAKAISHA」や「パラノーマル・アクティビティ」で知られるPOV（Point of View）方式、つまり手持ちカメラで主観的に録画された映像という設定の疑似ドキュメンタリー形式の映画だ。いかにも低予算という作風ながら高度なCG技術と、超能力高校生という設定が若者を中心に人気を集め、いま流行のPOV作品としては突出した一本だ。

まずストーリーが普通の高校生の思考に沿って出来ているところが、漫画みたいなストーリーをいかにも本当らしく見せている。主人公の三人は、意思で物を動かすことが出来る念力「テレキネシス」を持ってしまうのだが、それを正義のために使ってヒーローになる訳でもなく、野球ボールやレゴを空中に浮かせることから始まり、女の子のスカートめくりをしたり、ぬいぐるみを動かして子供を泣かせたり、得意技を披露する学校のイベント"タレント・ショー"でマジックや綱渡りをして一躍人気者になったりする。超能力があったらこんな事をしてみたい、と子供の頃に誰もが想像した世界だ。ただその世界の先で、アンドリューは現実の鬱憤の爆発という結果にたどり着いてしまうのだが…。

また、POV方式ではカメラワークが限定されてしまいがちだが、本作ではアンドリューが超能力でカメラを空中に浮かせて自分を撮影し始めた時から、カメラワークが自在になる。このアイデアはなるほど！と感心せずにはいられない。さらに、カメラを持ち歩いてブログにアップしている女子生徒の映像を使ったり、今や道路や公共の場所に当たり前に設置されている数々の防犯カメラ、iPhone、iPadなど携帯端末に備わったHDカメラなど、あらゆる場面で録画が可能な現代社会の特徴を利用。後半ではそれらの映像をつなぎ合わせ、疑似ドキュメンタリー映像の表現方法を一気に拡大させた。

出演者が無名俳優ばかりというのも、疑似ドキュメンタリーをもっともらしく見せるために重要な点だろう。一番知られていそうなのがスティーヴ役のマイケル・Ｂ・ジョーダンで、TVドラマや映画「レッド・テイルズ」に出演している。アンドリュー役のデイン・デハーン、マット役のアレックス・ラッセルも、本作を機に今後は続々と新作に登場予定だ。

監督は本作が長編デビューの若手ジョシュ・トランク。脚本は「狼男アメリカン」のジョン・ランディス監督の息子、マックス・ランディス。二人とも1985年生まれの、注目すべき20代のクリエーターだ。高校生の心情をうまく表現して共感を得たのも若きクリエーターだからこそできた事。監督によると、大友克洋の「AKIRA」に影響を受けたというが、同じく大友の「童夢」のようなカタロストロフィ・シーンも映像化されている。脚本や編集に荒削りな部分もあるが、あまり気にならずに最後までぐいぐい引っ張ってくれる。とにかく一見の価値は十分にある一本だ。

（＊注）製品仕様には表記されていないが、初期言語設定が日本語設定のBlu-ray機器で再生する場合にオリジナル日本語吹替え音声／日本語字幕付きで視聴可能。

特典はすべて合わせて15分ほどで内容も乏しいのが残念。

(1) 未公開シーン：マットとケイシー（HD収録、1分）
マットとケイシーが進学先について話している未公開シーン。英語音声、日本語字幕付き。

(2) プレビズ：コンセプト・アニマティック映像集（HD収録、8分）
いくつかのシーンをアニメーションで作成したシュミレーション映像。英語音声、日本語字幕付き。

(3) 別キャストによるカメラテスト（HD収録、4分）
実際の出演者とは別の俳優によるカメラテスト映像。英語音声、日本語字幕付き。

(4) オリジナル劇場予告編（HD収録、2分）
本作の劇場予告編一本。英語音声、字幕なし。

(5) サウンドトラック情報
本作のサントラ情報。

(6) デジタルコピー用のアクティベーション・コード

映像は画面比率1.85:1、1080p/AVCエンコード。疑似ドキュメンタリーなので、もともとの映像がハリウッド大作の超高画質とは異なる点は理解しておきたい。ただ、さすがに「アンドリューが500ドルで買った2004年もののデジカメ」で撮影したという設定そのままの低クオリティであるはずもなく、あくまでもハンディカム撮影を装った高画質なのだ。

実際、劇場の大スクリーンで観た時にはもっと粗い映像だった印象があるが、このBlu-rayの映像はかなり綺麗に仕上がっている。顔のアップのディテールや、物の素材感、色彩などは大作にひけをとらないレベル。クライマックスでめまぐるしくカットが変わる部分では、ややデジタル・ノイズが見られるが、ほとんど気にならない程度だった。意図的に画質を落として見せているPOV映画は目が疲れて苦手という方にも、問題ない高画質だろう。

字幕は日本語と英語字幕を収録。（初期言語設定が日本語設定のBlu-ray機器で再生した場合に表示可能な字幕）

音声は英語DTS-HDマスター・オーディオ5.1ch（ロスレス）と、日本語デジタル・サラウンド5.1chを収録。（初期言語設定が日本語設定のBlu-ray機器で再生した場合に再生可能な音声）

アンドリューがDTS-HDロスレス音声で自分を撮影している筈はないため、音声に関しても本物を装いつつ、ずっと質の高い音作りになる。今回はオリジナル英語音声で視聴した。前半は台詞中心で効果音も特別なものはないが、クライマックスでのヘリコプター音や、銃声、建物の崩壊音などは、迫力ありで臨場感たっぷり。音楽はバックグラウンド以外は使われていない。本作のサウンドトラックとしては十分に役割を果たしている。
台詞も明瞭で聞き取りには問題ない。日常会話中心で、あまり難しい単語も使われていないので、高校生の生きた会話で英会話の勉強にもなるだろう。