Black Demons (1991)
(ブラック・デモンズ）

＜作品データ＞
リージョン： 1
制作： Media Blasters
映像仕様： LBX
音声仕様： Dolby Digital Mono (English)
作品時間： 88分
画面比率： 1.85:1
CC： No
字幕： None

若きニューヨーカーのディック（ジョー・バロフ）ととその妹ジェシカ（ソニア・カーティス）、それにジェシカの恋人にしてイギリス人のケビン（キース・ヴァン・ホーベン）の３人はブラジルのリオデジャネイロを訪問する。だが、ジェシカらの心配をよそに現地宗教マクンバ（※）に異常なまでの好奇心を示すディックは、偶然に知り合った老女の案内を得てマクンバの儀式を目の当たりにしたのみならず、その内容を密かに録音するのだった。
そして、翌日にリオを出たものの、郊外の山道で車両故障により立ち往生した３人はジョセフ（フィリップ・マーレイ）とソニア（ジュリアナ・テゼイラ）という現地の若者カップルの好意により、近くの別荘への滞在を許される。だが、その晩にディックが前日に録音した内容を再生したことから、別荘近くの墓地に眠っていた黒人奴隷たちの死体が蘇ったのみならず、無防御なソニアに襲い掛かるのだった．．．
　
（※）マクンバ（MACUMBA）とは16世紀にアフリカ大陸からブラジルに送られても尚アフリカの神々を崇拝し続けると同時に、新地ブラジルのローマ・カトリックの影響を強く受けた黒人奴隷たちが形成した独自のスピリット信仰のことで、今日のブラジル共和国に於ける「マクンバ」という言葉自体は人種の壁を越えた日常単語の一つになっている。尚、本作の本編にはごく手短で断片的な説明しか登場しないので、作品のバックグランド理解の為には事前に簡単な検索を行ってみるのも一興だろう。

日本に於ける本作（原題『DEMONI ３』）は予定されていた劇場公開の中止以来ビデオ発売さえ見送られて現在に至っている不運なホラー映画であり、同じく日本未公開のホラー映画にして研究仲間と共に曰く付きの洞窟に閉じ込められた若き女性科学者の恐怖体験を描いた『LE PORTE DELL'INFERNO』（1990年）の姉妹編である。姉妹編であるだけに、湿ったホラー雰囲気作りと「結末」に至るまでの二段階構造などの共通点を多く持つ２作だが、その一方で本作の前半部分は文字通り閉鎖的な洞窟内部を主要舞台とする『LE　PORTE　DELL'INFERONO』とは対照的にブラジルのダイナミックな風景をバックに展開する上に、全篇を通して野外シーンが多く、更には目玉を刳り貫いたり頚動脈を掻っ切ったりするストレート系の血みどろ描写を前面に押し出しているという点でもダイナミックであり、この２作に関して言えば『LE PORTE DELL'INFERNO』の「閉鎖感」に対しての「開放感」である面にこそ本作の特徴がある。
又、本作のスタッフ陣の中で注目に値するのは、ダリオ・アルジェント監督とその弟子たちの作品でお馴染みにして今回は上記の残酷描写作りに貢献した特殊メイク効果担当のフランコ・カサグーニと、日本未公開の傑作メディカル・ジャーロ『I DUE VOLTI DELLA PAURA』(1972年）やオカルト映画『デアボリカ』（1975年）で知られるベテラン作曲家フランコ・ミカリッツィの２人であり、特にミカリッツィによる印象的な音楽は本作全体の雰囲気作りに大いに貢献している。

1）INTERVIEWS
本作の原案と演出を手掛けたウンベルト・レンツィと、その妻にして本作の脚本（と「スクリプト・スーパーヴァイザー」）を担当したオルガ・ペパーの２人に対するインタビュー。尚、インタビューそのものはイタリア語で行われているが、英語字幕が出るので原語理解の有無にかかわらず対応可能である。
そのインタビューの中でウンベルト・レンツィ監督は、『殺しのヒッチャー』（1989年）に次ぐ好演を期待して主役級に抜擢したジョー・バロフが今回は過酷なブラジル・ロケの為か余り良い演技を見せてくれなかったことを惜しんでいる。又、同監督によれば、バロフは共演者のキース・ヴァン・ホーベンと険悪な仲だったようだ。更に、レンツィ監督はヒロイン役のソニア・カーティスを「身長が低い上に美人ではない」と辛口に酷評した上で、ブラジル・ロケ中に食中毒を起こして入院した彼女が本作の制作に重大な悪影響を及ぼしたと苦情を呈している。
基本的に今回のレンツィ監督インタビューは本作に対して否定的・批判的な内容なので大いに当惑させられるが、本作に限らず同監督作品に登場する「ゾンビ」は表面的にはゾンビそのものだが実は社会的メタファーであるという旨のコメント部分は興味深いと思う。
尚、『LE PORTE DELL'INFERNO』の原案・脚本も手掛けたオルガ・ペパーへのインタビューに関して言うと、本作の原題は『DEMONI ３』だがランベルト・バーヴァ監督の『DEMONI (デモンズ)』『DEMONI ２ (デモンズ２)』とは何の関係もない云々の大部分を夫のレンツィ監督が代弁しているので、オルガ自身によるコメントは本当に申し分程度なのだが、少なくとも本作にマクンバという異色にして力強いテーマを持ち込んだのは（「原案」担当のレンツィ監督ではなく）オルガのほうだったこと（だからこその「スクリプト・スーパーヴァイザー」なのだろう）が分かる。

2）TRAILERS
本作の他に『ZOMBIE 2 (サンゲリア）』『ZOMBIE 3 （サンゲリア２）』『ZOMBIE 4 (ゾンビ４）』『KILLING BIRDS (キリング・バード）』の４作を加えた計５本の予告編。尚、ここに収録されている予告編の「タイトル」の一部は実際に発売されている米国盤のタイトルとは異なるので注意を要する。

アナモルフィック・ワイドスクリーン（アスペクト比1.85：１）収録であり、『BLACK ZOMBIES』というタイトルで製作国イタリアを含む欧州各国に出回っていたMULTIVISION（ドイツ）盤と比べると遥かに解像度が高い上に統一感もあり、ノイズも殆どない。尚、瞬間的に「不鮮明」になる場面もあるにはあるが、それらはハード・スケジュールで行われた撮影時に生じたオリジナル・ピンボケであろう。

収められているのはモノラルの英語音声のみであり、残念ながら、こちらに関してはMULTIVISION盤（モノラルのドイツ語/イタリア語）と大差がなく、全体的に不鮮明な感じは否めず、高音・低音共に弱い。但し、本作そのものがレア作品なので、今回の内容以上の音質は望めないであろう上に、弱いながらもバランス感は始終維持しているので、特に気になるほど悪くはないと思う。