Small Time Crooks (2000)
(おいしい生活）

＜作品データ＞
リージョン： 1
制作： DreamWorks
映像仕様： LBX
音声仕様： Dolby Digital Mono (English)
作品時間： 95分
画面比率： 1.85:1
CC： Yes
字幕： English

レイ（ウディ・アレン）は自称天才犯罪者。とは言っても既に足を洗い、現実的な妻フレンチー（トレーシー・ウルマン）とニューヨークの小汚いアパートでつつましく暮らしている。そんな二人は結婚25周年目に人生最後の賭けとばかりに銀行強盗を企てる。銀行の2軒隣にある空家を借りて、仲間たちと銀行の金庫へと通じる地下道を掘って大金を手に入れようというのだ。しかしカモフラージュのために始めたフレンチーのクッキー屋がなぜか大繁盛。気が付いたら全米にフランチャイズまで展開し、あれよあれよという間に大金持ち！しかしいきなりハイソな世界に足を踏み入れてしまったレイとトレイシーの夫婦仲は少しづつぎくしゃくしていくのだった・・・。

見どころの一つは、何と言ってもウッディ・アレン自らが出演、ジョークをかましまくっているところだろう。ファンとしては、やはり彼自身が役者として出演して初めて「ウッディ・アレンの映画」なのだ。一つ前の作品「ギター弾きの恋」では出演しなかっただけあって、本作でアレンの出演を喜んだファンは多いだろう。それに加え、この作品では同じく大物コメディエンヌのトレイシー・ウルマン（「ブロードウェイと銃弾」に出演、「プレタプルテ」では雑誌編集長を演じている）がアレンと夫婦役で出演しており、アレンとのマシンガンのような掛け合いが炸裂している。この二人のコンビは、アレンとミア・ファローやダイアン・キートンとの黄金時代を彷彿させるほどいい線を行っており、今後もこの組み合わせに期待したいところだ。アレン映画には大物役者がいつもちょい役で出演しているが（「セレブリティ」ではディカプリオが本人にそっくりな役で出演）、本作ではヒュー・グラントがずる賢いアート・ディーラー役で登場。ヒュー・グラントの悪役は滅多に見れるものではない。ハンサムで冷たい性格という設定が、かなりハマっていて見ものだ。しかし最大の見どころは、アレンの真骨頂とも言える支離滅裂なプロット。なぜ銀行強盗？なぜクッキー屋さん？どうしてこうなるの？という具合にストーリーが二転三転する。やはりウッディ・アレンはこうでなくては、とうなずかせてくれる上質のスラップスティック・コメディに仕上がっている。そのアレン的ジョークのきわどい面白さは、日本語字幕付きで観ても半減してしまうもの。ぜひ英語字幕を見ながらこの映画に挑戦して、ウッディ・アレンの本当の面白さを体験してほしい。

特別収録は劇場公開用予告、キャスト紹介、プロダクション・ノートのみ。アレン自身が映画を語ることをあまり好まないという理由からであろう。この中ではプロダクション・ノートが興味深い。ここでアレンは「今作はひたすら笑える映画を作りたかったんだ」「でも、もしテーマがあるとしたら、『人は本当に欲しい物を手に入れたときは用心しなきゃいけない』って事かな」と語っている。また、ヒュー・グラントについてのコメントがコメディの本質を突いている。「ヒューはすごいコメディアンだよ。ヒューは間の取り方がとても難しい役柄だったんだけど、彼は完璧だったよ。コメディにとっては間というものが命だからね」

画像比は1.85:1のアナモルフィック・ワイドスクリーン。画像のシャープさと色の再現性がすばらしい。アレン映画の多くはマンハッタンでのオールロケだが、ニューヨークのあまり強くない光量の中でもマンハッタンの建物が鮮明に描写されている。アレンの色と光の使い方のセンスは特筆すべきものがあるが、これは彼がいつもすばらしい撮影監督を起用しているからでもある。今作の撮影監督は前作の「ギター弾きの恋」に引き続き中国人のチャオ・フェイ。特にレイとフレンチーのアパートの屋上での夕日のシーンは、逆光のなかで非常に黒が多く、ともすればツブレがちなシーンだが、ここではきちんとディテールが表現されていてすばらしい。
英語字幕は白地に黒枠で表示される。比較的画面の上のほうに表示されるので、視点をあまり上下させることなく楽に読むことが出来る。特に早いダイアローグが連続して出てくるためこの配慮は嬉しい。英語CCの収録もある。

この作品も含め、アレン作品のDVDは常にモノラル音声のみに徹底している。全編をダイアローグが占めている作品である以上、セリフの明瞭さがポイントになる。会話におけるミックスはスタンダードなフロントスピーカーからだが、音の質は非常にクリスプで、早口なジョークの応酬もとても聞き易い。サウンドトラックに関してはサラウンドをほとんど使用していないが、これもアレン自身がサラウンド効果を嫌っているためだろう。アレン的なレトロ感を堪能するためにはこれで正しいと言える。意図的に大きなサウンドエフェクトを避け、比較的狭い音域に収められている。お馴染みの古いジャズはこの映画でも多用されているが、細かい音まで浮き出るような臨場感がある。言語は英語のみ。