Memento: Limited Edition (DTS) (2001)
(メメント）

＜作品データ＞
リージョン： 1
制作： Columbia/TriStar
映像仕様： LBX
音声仕様： DTS/Dolby Digital 5.1 Surround (English)
作品時間： 116分
画面比率： 2.35:1
CC： Yes
字幕： English,Spanish

最後の記憶は死んでゆく妻の姿。それ以前の記憶はあっても、新たな記憶を蓄積することはできない。今この瞬間に起きている出来事も数分後には記憶がない---妻がレイプされ殺されるという衝撃的な事件をきっかけに、前向性健忘症と呼ばれる珍しい症状を患ったレナードは、常にポラロイド写真を撮り、メモを取り、自分の体に入れ墨を入れ、それらだけを頼りに一つの目的を遂行しようとしていた。妻殺しの犯人への復讐である。

映画は結末から始まり、物語のスタート時点へ向かって時間軸を遡ってゆく。数分間のシーンの後に、その直前の出来事のシーンが続き、その後さらにそれ以前のシーンが始まるといった具合だ。と当時に、モノクロ映像で順行するエピソードが織り込まれている。観客は記憶を維持できない主人公と同様、数分間だけの出来事を経験する。その繰り返しの中で、常に自分の記憶力だけを頼りにストーリーを繋げていかなければいけない。記憶力への挑戦だ。

後にアル・パチーノの「インソムニア」を監督した、クリストファー・ノーラン監督の才能が存分に発揮された作品だ。兄弟であるジョナサン・ノーランによる短編小説を基に複雑な構成で映像化を実現しているが、その構成を注意深く分析してみると、非常に緻密に計算されていることがわかる。観客の脳を決して休ませない込み入った展開で見せながも、意外なラストに向かうまでには、きちんとした筋道ができている。後にこの作品の手法を模倣したと思われる映画も作られているが、「メメント」ほど時間を遡る構成を徹底した形式を実現させている作品はない。非常に斬新で衝撃的な映像に、誰もが最初はかなり驚くだろう。そして、もう一度観たいと思わせる。その謎解きにはまってしまう人も多いのではなかろうか。

出演は、主人公のレナードに「L.A. コンフィデンシャル」のガイ・ピアース。決して自分の個性を全面に押し出さず、どんな役でもこなせる演技力を備えた本格派俳優だ。犯人探しの途中で出会う怪しげな女性に「マトリックス」のキャリー・アン・モス、重要な人物として同じく「マトリックス」のジョー・パントリアーノが出演している。

この限定版Special Editionでは、パッケージもかなりそそられる要素だ。ノートブックを形取った紙ケースにデジパック。中には精神分析レポートのようなものが4枚、クリップで留められている。そして、本編ディスク、特典ディスク共にまるでパズルを解くようなメニュー。観る方としては思うところになかなかたどりつけず厄介ではあるが、この際、このトリックも気長に楽しんでもらいたい。

ディスク#1のメニューは言葉の羅列、ディスク#2ではさまざまなアイコンが並んでいる。主なフューチャーへアクセスする方法は、以下の通り。

＜ディスク#1＞
- "WATCH"を選択して本編へ。
- "LISTEN"を選択してDD/DTS音声オプション画面へ。
- "READ"を選択して字幕選択画面へ。
- "CHAPTER"を選択してチャプター・セレクションへ。
- "COMMENTS"を選択して、クリストファー・ノーラン監督コメンタリーへ。あまり歯切れの良くない監督による情報量が非常に少ないコメンタリー。作品内容がこれだけ込み入っていれば誰でも詳細な解説を監督から聞きたいはず。残念至極である。

＊メニュー画面のまましばらく待つと、上の5つの文字が浮かび上がってくるのでより分かりやすくなる。

＜ディスク#2＞
ディスク#2の特典収録は、正しいアイコンを選び、その後、いくつかの心理クイズに答えて初めてたどり付くことが出来る。その問いは答えがあってないようなものばかり。間違った答えを選ぶと、メニューに戻ってしまうので最初からやり直し。しかし、ディフォルトでカーソルは回答"C"に合っており、常に"C"を選ぶと、ほとんどの場合は問題なくそれぞれ別の特典にたどり着くようだ。果たしていくつ特典映像があるのかは明らかではないが・・。

- コンパスのアイコンから、プロダクション・スティル、スケッチへ。
- 目覚まし時計のアイコンから、ジョナサン・ノーラン作の短編小説"Memento Mori"へ。
- 本のアイコンから完全シナリオ収録へ。
- 地球儀のアイコンからプロモーションマテリアル、ポスター、ロビー・カードなどのギャラリーへ。
- 骸骨のアイコンからサンダンス・フィルム・チャンネルのドキュメンタリー"Anatomy Of A Scene"(25分）へ。これは監督やエディターなどへのインタビューを含み、特典の中でも見逃せない内容。
- 双眼鏡のアイコンからギャラリー、予告編へ。

そして、これでもかとばかりにもっと込み入った隠しコマンドの数々！

- 骸骨のアイコンから順次問いに答え、6番目の問い（タイヤがパンクした4枚のシークエンスを順番に並び替えるもの）で、シークエンスを逆に並べると、時間通りに進行するストーリーで編集された「メメント」にアクセスできる。
- 骸骨のアイコンから3番目の問い (4つの絵）で"E"と答え、次の問で"D"を選択すると、Bootleg Artへ。
- 双眼鏡のアイコンから5番目の問い (switchに関する問い)で"B"を選択し、次の問い（5つの絵）で"A"を選ぶと、コンセプト・アートへ。
- コンパスのアイコンからプロダクション・スティルの特別映像に進み、"Exit"を選ぶと、さらに問いが現れるので"C"と答えると、レナードが書いたと思われるジャーナルの画面へ。
- 目覚まし時計のアイコンから5番目の問い (2人の女性の絵）で"D"を選ぶと、DVDクレジットへ。

リマスターで登場した限定版Special Editionの本編ディスクは、前回のリリースからさらに一歩そのクオリティを高めた。これまでのあらゆるDVDリリースの中でもトップクラスに入るスーパー・クリアーな映像は、リファレンス・ディスクに値すると言って問題ないだろう。特に色彩の再現力は超一級。繊細な肌の色を前回のリリースや他のDVDと見比べてみて欲しい。モノクロシーンでは深い黒の中でもグラデーションが明瞭に出ている。ノイズの類は一切なし。
字幕は英語とスペイン語、英語CCを収録。

前回のリリースとは異なるリマスター音声と思われ、サラウンドがより活躍するDTS。低音もより力強い。特に主人公自身がフラッシュバックするシーンなどでは、音響空間のインパクトがある。セリフの量がかなり多いドラマだが、言葉が非常に近いところで聞こえてくる感覚がある。
音声は英語DTS、英語5.1ch、英語ステレオを収録。