1956年に公開されたフレッド・マクロード・ウィルコックス監督作「禁断の惑星」は、SF映画は子供のものというそれまでの考えを覆し、その後のSF映画に多大な影響を与えた作品である。シェイクスピアの「テンペスト」からヒントを得て、怪物化して現れた潜在意識との葛藤という難解なテーマに挑み、その怪物は当時冷戦下にあった人々の核への恐怖心を暗喩していた。また人間に仕えるロボット、円盤型の宇宙船で人間が他の惑星へ行く設定、特殊効果から宇宙や他の惑星のイメージまで、今やSF作品には欠かせない要素が本作から始まっている。50年経っても全く色褪せることなく楽しめるのはそのためだ。
そういった奥の深さについては、特典映像の"Watch the Skies deals with 50's SF films, Amazing: Exploring the Far reaches of Forbidden Planet"でのスティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、リドリー・スコット、ジェームズ・キャメロンという現代の代表的な監督達へのインタビューで興味深く語られている。このインタビュー中で引用された50年代のSF映画の予告編は、特典映像メニューの"Theatrical Trailers"に収録されているので参考にされたい。
また、本作に登場するロビーはロボットの一つのモデルを確立したと言って良い。「宇宙家族ロビンソン」のフライデーは明らかにロビーと同系列のロボットだが、類似ロボットはその後のSF映画やアニメに頻繁に登場しているのだ。光沢のあるテクスチャーで大きさ9cmほどのロビーのフィギュアは本エディションのお宝の一つだ。
HD DVD映像は、1080p/VC-1トランスファーされた2.40:1アナモルフィック・ワイドスクリーン。DVD盤同様、完全リマスター済。オリジナル・ソースから残るグレインがフィルム感を思わせる暖かみのある映像。優れたリマスター技術でゴミやキズ等はほとんど見られない。はっきりした黒と陰のグラデーションは優秀。適度なコントラストのカラーは発色に優れ、人の肌色も自然だ。マットペイント(背景画)のアルテアの風景は画質が良くなったことで逆に絵の具っぽさまで出てしまったところもあるが、背景まで鮮明で手に取るような奥行きがあり、この空間感覚はすばらしい。
音声は640kbpsエンコーディングのドルビーデジタル5.1plus。低音やサラウンドはさすがに50年前の作品に見合った程度のものだが、可能な限り生き生きとした音を届けてくれる。フロントスピーカー中心だが幾つかのシーンで取り巻くような音響空間も感じられるシーンもある。セリフは明瞭で全く問題ない。
字幕は英語、フランス語、スペイン語字幕を収録。また、本作を含め現在発売中のHD DVDにはリージョン制限がないため、日本のHD DVD再生機器で再生が可能であるのも魅力の一つだ。
The Invisible Boy
(続編「宇宙への冒険」全編収録。モノクロ映像、英語音声、字幕収録はない。)
Behind The Story
- Watch the Skies deals with 50's SF films, Amazing: Exploring the Far reaches of Forbidden Planet: スピルバーグ、ルーカス、スコット、キャメロンが50年代のSF映画について語るインタビューを含めたドキュメンタリー。
- Amazing: Exploring the Far reaches of Forbidden Planet: 本作のキャストや映画関係者たちのインタビューを交えたドキュメンタリー。
- Robbie the Robot: Engineering a Sci-Fi Icon: ロビー誕生に関わるメーキング。
- Excerpt From MGM Parade Episode 27: ウォルター・ピジョンがホストを務めたプロモーションのためのTV番組で本作を紹介。
- Excerpt From MGM Parade Episode 28: ウォルター・ピジョンがホストを務めたプロモーションのためのTV番組で本作を紹介。
- 2/28/1958 The Thin Man: Robot Client TV Episode: ピーター・ローフォード主演「The Thin Man」でロビーが登場する回のエピソード。
Additional Footage
- Deleted Scenes: カットシーン。
- Lost Footage: スペシャル・エフェクトのテスト映像。