West Side Story: Special Edition (1961)
(ウエストサイド物語）

＜作品データ＞
リージョン： 1
制作： Warner
映像仕様： LBX
音声仕様： Dolby Digital 5.1 Surround (English)
作品時間： 152分
画面比率： 2.20:1
CC： Yes
字幕： English,Spanish,French

ニューヨークのウエスト・サイドで縄張り争いを続ける2つの不良少年グループがあった。アメリカ生まれの白人少年による「ジェット」と、プエルトリコ移民たちの「シャーク」。ある時、ジェットの元リーダー・トニーと、シャークを率いるベルナルドの妹マリアがダンスホールで出会い、恋に落ちる。しかし、2人の恋は不良少年達の争いをさらに深め、ついに全面対決となってしまう・・・。

1957年にブロードウエイ・ミュージカルとして初演、1961年に映画化された「ウエスト・サイド物語」は、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を現代ニューヨークに置き換えてアメリカの人種対立を現実的な設定で描き、ハッピーエンドしかあり得なかったミュージカル映画の常識を覆した歴史的な作品だ。アカデミー作品賞ほか11部門でオスカー獲得という快挙を成し遂げている。

そういった社会的背景を抜きにしても、この作品が世代を越えて人々に愛され、数々の名曲が色褪せることなく歌われ続けている理由は、作品の素晴らしさゆえである。レナード・バーンスタインによる独創的で斬新な音楽と、ジェローム・ロビンズの振り付けによる高度なダンスは、優れたカメラワークと編集によって高揚するエネルギーとなり見事に一体化している。既製のリズムに捕らわれないステップが繰り返され、緊張感みなぎるダンスホールのシーン。これほどまで熱気のあるダンスシーンはほかにあるだろうか。リフとベルナルドがナイフで決闘するシーンでは、その絶対的なリズム感の完成度に驚くばかりだ。駐車場のシーンでのパフォーマンスは、狭い空間一杯にストレスが充満するような圧倒的がたまらない臨場感を出している。そして、 "Tonight"、 "America"、 "Somewhere"、 "Maria" など、忘れられない名曲の数々。ダンス、歌唱、楽曲のどれもが素晴らしく、それらを一つの物語の中に集結させる映画の魅力が凝縮された作品。まさに、ミュージカル映画の魅力が最高に生かされた傑作だ。

米国盤DVDではMGMが1998年に通常版をリリース済みだが、スペシャル・エディションとしての今回のリリースでは、2枚組にブックレットが付属した名作にふさわしいコレクターズ版として登場した。

本編収録のディスク#1には、インターミッションがオプションで収録されている。公開当時のままインターミッションを挟んで見ることもできるし、連続して鑑賞することも可能。

ディスク#2に収められている特別収録の中では、約55分のドキュメンタリー"West Side Story"が見逃せない。撮影中の映像を折り込みながら、出演者やスタッフが当時を振り返って撮影秘話を語ってくれる。あまり知られていないことだが、撮影はジェローム・ロビンス（振付も担当）とロバート・ワイズによる共同監督としてスタートしたものの、ジェローム・ロビンスが撮影現場で変更を加えた続けためにスケジュールが大幅に遅れ、予算が限界となったために監督から降ろされたいきさつが詳しく語られている。撮影はその後、ロバート・ワイズだけで続行されたが、編集の段階でロバート・ワイズがジェローム・ロビンスを呼び戻し、再び携わることになったという。

また、ナタリーウッド自身が歌う"I Feel Pretty"、"Tonight"のカットも見逃せない。当初の契約では、ナタリー・ウッドが自分の声で歌う予定であったが、実際に録音してみたところ歌唱力がもう一つということで吹き替えに変更されたと解説されている。そして、名パフォーマンスについての興味深いコメントの数々。撮影だけに2ヶ月もかかったプロローグの裏話。ダンスホールのシーンでは、リタ・モレノが「あんなに手足が緊張しっぱなしだったことは例がない」と話すなど、各重要なシーンについての出演者のコメントがある。その他の特別映像は、ストーリーボード比較（5分）、約250枚のスティル・ギャラリー、予告編が収録されている。（特典映像には字幕、CCの収録はなし）

そして、真っ赤なケースにDVDと共に収納されているのが、"Collectible Scrapbook"（156頁）。注目は改訂部分も含むスクリプト完全収録とコレクターにはたまらないプログラムの復刻版。そのほか、歌詞、未公開フォト、当時の新聞記事の切り抜きなど、貴重な資料がまとめられた一冊である。

前回のリリースと同じマスターと考えられ、1、2カ所にキズのようなものが見られたが、フィルムの年代を考えても全体としては最高の出来上がりと言える。シャープ度、色の鮮度、ディティールなどの面では、確かに最近の作品と比べると古さを感じるが、ほどよいフィルム感が残っている。デジタル的で隙のないシャープな映像よりも、この感じを好む映画ファンも多いことだろう。テクニカラーは良質の再現。赤をバックにしたダンスホールのシーン、マリアの勤める洋装店のシーンでの発色は特に印象的。一方、グレーが主体の駐車場のシーンではモノトーンの諧調が良好で、確かな黒も出ている。

字幕は英語、フランス語、スペイン語、英語CCを収録。

英語5.1chサウンドトラックは、前回のリリースとは異なるリミックス版。音声はステレオが中心ではあるものの、全体を囲む音響空間は存在感がある。ダンスホールのシーンではバーンスタインの名曲が部屋全体に満ちあふれる。クライマックスの決闘のシーンでは、静まりかえった夜の高架下、サウンドトラックのリズムがこだまする。サラウンド感はそれほど明瞭ではないが、低音は非常に良好。セリフや歌は非常にクリア。英語の他にはフランス語モノ、スペイン語モノ音声を収録。