Splice (Blu-ray/DVD) (2009)
(スプライス）

＜作品データ＞
リージョン： ALL
制作： Warner
映像仕様： LBX
音声仕様： DTS HD 5.1 Surround (English), Dolby Digital 5.1 Surround (Spanish)
作品時間： 104分
画面比率： 1.85:1
CC： Yes
字幕： English,Spanish

生物医薬企業の研究所で遺伝子組換えによる最先端の実験を行い、時の人となった二人の科学者、クライヴ（エイドリアン・ブロディ）とエルサ（サラ・ポーリー）。プライベートでも恋人同士の二人は、高い知識と技術、さらに強い情熱を持つ科学者としてお互いを尊重し合うパートナーとして研究を続けていた。そしてついに動物のDNAを掛け合わせ、新生物を作ることに成功する。オスとメスのペアで誕生した新生物は、フレッドとジンジャーと名付けられた。
クライヴとエルサは、次に人間のDNAへの応用に意欲を示すが、会社側はフレッドとジンジャーによって利益を得ることが先決だとし、彼らの研究を阻止してしまった。しかし人間への応用をあきらめきれないクライヴとエルサは、無許可のまま極秘で人間と動物のDNAを掛け合わせる実験に手を出してしまう。その結果、高速で成長する人間と動物のハイブリッドH-50が誕生した。
動物的で凶暴なH-50にクライヴは危険を感じる一方、エルサは母性愛を持って接するようになる。次第に人間らしい姿になってゆくH-50を二人はドレンと名付け、家族同然に育てていった。やがて成長したドレンはまるで人間の女性のような姿になり、クライヴとエルサにとって予想外の行動を起こすようになる…。

奇抜な設定と斬新なビジュアル・センスで話題となった異色サスペンス「CUBE」の奇才ヴィンチェンゾ・ナタリが脚本・監督を手がけた最新SFホラー。「パンズ・ラビリンス」で一躍有名になったギレルモ・デル・トロが製作総指揮として参加、撮影監督は「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」でセザール賞撮影賞を受賞した永田鉄男とくれば、SFファン必見の一本だろう。タイトルの"Splice"とはズバリ「遺伝子結合」の意味だ。

主演は「戦場のピアニスト」でアカデミー主演男優賞に輝き、最近では「プレデターズ」の主演などでジャンルの幅を広げているエイドリアン・ブロディ。そのパートナーには「バロン」で子役として注目されて以来数々の映画に出演、「アウェイ・フロム・ハー　君を想う」では監督デビューも果たしたサラ・ポーリー。ドレン役はフランス人美人女優アサルト・エースのデルフィーヌ・シャネアック。

SF映画としての最大の見どころは、フレッドとジンジャーの奇妙な形状や、ドレンことキメラの美しいフォルムをまるで本物の生き物のように描き出したCG技術だろう。フレッドとジンジャーは巨大ナメクジのような形で、男性器の一部のようでもあり動物というイメージとはかけ離れた姿をしているが、映像の生々しさにCGであることはすっかり忘れて見入ってしまった。最初はウサギのような姿をしていたドレンが、後半になるにつれシーンごとに成長して人間の女性のようになまめかしい姿になってゆく経過も目を見張る。作り物と全く感じさせない技術の高さはまた、観る者にぞっとするようなそら恐ろしさを与える。倫理上の問題とも絡んで存在そのものが危険なハイブリットという生き物の性質が、映像から十分に伝わってくるのだ。

その産みの親である二人の科学者が次第にドレンに翻弄され、立場を忘れ人間性とエゴがあらわになってゆくところがストーリーとしての見どころ。ドレンの成長と共に普通の親としての悩みや家庭の問題が出てくるところも面白い。種は違っても家族問題は同じといったところか。加えてドレンとの関わりによって男女の違いが浮き彫りになってゆく。誕生して間もなくドレンを抹殺しようとしたり、成長したドレンとあらぬ行為にまで及んでしまうクライヴとは対称的に、母性と科学への一途な情熱でドレンを守り抜くことに全力を注ぐエルサ。エルサという女の性が本作の肝でもあるのだが、終盤に起こる衝撃的な出来事と怒濤のラストまで、一瞬たりとも目が離せない展開が待っている！

本作はアメリカでは2010年6月に公開済み、日本での公開は2011年になるようだ。しっかりした脚本と映像で仕上がった見応えのあるSF作品だが、「CUBE」ほどの衝撃やオリジナリティには乏しく、取り扱いの難しいテーマだけにあまり話題にされなかったようだ。
今回は米国盤スタンダードDVDとBlu-ray/DVDコンボが同時発売。Blu-rayのクオリティは良好ではあるが突出した要素に欠け、特典映像の少なさからも物足りない内容に終わってしまっている。作品は十分に見どころがあるので、SFファンは必見だろう。

特典映像はメイキング・ドキュメンタリー"A Director's Playground: Vincenzo Natali on the Set of Splice"（SD収録、35分） のみという寂しい収録内容。カナダでの撮影映像を基にしたメイキング映像で、撮影舞台裏を覗くことができる興味深い内容だが、やはりHD収録にして欲しかった。この特典は英語字幕付き。
本作のCG製作やドレンの製作デザインなど、興味深い素材も多いだけに特典の少なさは残念。
なお、Blu-rayディスクの他にデジタル・コピーの付いたスタンダードDVDディスクも付いている。

画面比率1.85:1、VC-1 1080pトランスファー。十分な高画質だが、目を見張るほどのシャープ度には欠けるややソフトな映像。数ヶ所混合物のようなものも見受けられた。色彩の鮮明さは無く血色の悪い肌色や、冷ややかな青みがかったイメージは作品の意図だろう。ディテールや黒の締まりも良好。注目はCG映像のドレン。周囲との違和感なくリアルに映され自在の動きを見せる。ドレンだけはどのシーンを取っても高度な技術が感じられる映像だ。

字幕は英語SDH (Subtitles for the Deaf & Hard of Hearing)、スペイン語を収録。

英語DTS-HD5.1chマスター・オーディオは、トップレベルには及ばないが申し分ない優秀な仕上がり。ラボの中、古い農場、森の中などそれぞれのシーンに合った臨場感ある音響空間を作る。低音は至って控えめだが、サラウンドは時折効果を発揮する。サスペンスフルなシーンでは大音量の音響効果も抜群で、作品の意図に十分沿ったサウンドトラックであることには間違いない。セリフは概ね良好で全く問題ないだろう。

音声はほかにスペイン語5.1chを収録。