＜作品データ＞
リージョン： n/a
制作：
映像仕様：
音声仕様：
作品時間： 0分
画面比率：
CC：
字幕：

マイク・ヘイゲン（グレゴリー・ペック）は、ニューヨークのスポーツ記者。ゴルフ・トーナメントの取材でカリフォルニアに飛んだ彼は、ファッション・デザイナーのマイラと出会う。意気投合した二人は即座に結婚、幸せ一杯でニューヨークへと戻る――幾多のトラブルに見舞われるとは夢にも思わずに。

マイクには新妻マイラに隠しておきたい秘密があった。まず元恋人のダンサー、ローリ・シャノン（ドロレス・グレイ）の存在。それから、ボクシング界を牛耳るギャングのマーク・テイラーに、暴露記事の取り消しを迫られていること。だが、彼の苦しいごまかしは次第に破綻し始める。まず、マイラのファッション・ショウにローリが起用される。彼女とは初対面を装いつつも、マイクは動転を隠せない。またテイラーの脅迫も次第に激しさを増す。編集長の機転で、彼はニューヨークのホテルの一室に潜伏。発信地をごまかしながら記事を書きつづける。業を煮やしたテイラーは、妻のマイラを誘拐してマイクをおびき出し、彼を殺そうとするのだが……。

とにもかくにも、本作でアカデミー脚本賞を受賞したジョージ・ウェルズに負うところ大である。なにしろ、のっけから不意をつかれる。というのもグレゴリー・ペックが「私の名前はマイク・ヘイゲン。スポーツ記者だ。あなたがたはボストンでの、〈乱闘〉について知っていると思うんだが……」と、カメラに向かって語り出すからだ。すると次にローレン・バコールが登場し、これまたカメラ目線で「マイクの言っていることって当てにならないわよ……」と話し始める。このように、物語の登場人物たちが、それぞれの立場から観客に向けて証言する、というかなり凝った回想形式になっている。これに回想中に繰りひろげられる丁々発止のやりとりが加わって映画の妙味となっているのだ。

もう一つはやはり、監督ヴィンセント・ミネリの演出力にある。『巴里のアメリカ人』や『バンド・ワゴン』など、彼はＭＧＭの絢爛たるミュージカル映画の名手として知られている。しかしミュージカル以外にも特異な才能を発揮していることは、日本ではあまり知られておらず、本DVDも未発売である。さてミュージカルとは誇張の美学だと思うが、この映画でも彼のケレン味に徹した演出が冴えている。二日酔いのグレゴリー・ペックの耳に、ちょっとした物音がとんでもない騒音で鳴り響いたり、朝の清々しい風景がすべて病的な風景に見えるシーンなど、ベタだが思わず吹き出してしまう。またローリがテレビ番組のリハーサルで見せるダンス・シーンの演出の部分にも、ミュージカル監督ミネリの本領が遺憾なく発揮されている。だが極めつけは、振付師ランディの〈乱闘〉である。ランディに扮するジャック・コールは本物の振付師であり、この映画のダンス・ナンバーを担当してもいる。その彼がアクロバティックな体技でバッタバッタとチンピラどもを倒していくあたりは、嘘とは分かっていながらも、その無茶苦茶さの徹底ぶりには降参するしかないだろう。

(1) インタビュー
衣装デザイナーであり、本映画のスーパーバイザーとしてもクレジットされているへレン・ローズのインタビュー（約5分）。画面冒頭の解説によれば、これは宣伝用に撮られたもの。形式的にはリポーターの質問に対しローズが答えているが、あまり客観性のある内容ではない。質問者側の音声フッテージが消失しているため、インタビューでその部分が無音になってしまうのは残念。英語字幕は付かないが、スペイン語、中国語、タイ語、韓国語は出すことができる。白黒、スタンダード（1:1.33）。
(2) 予告編
映像特典としては他に、オリジナル予告編（約3分30秒）が収録されている。こちらは、映画と同じく、ワイド画面（1:2.35）で見られる。

(3) その他
文字情報としては、他に"Cast & Crew" と "Awards" がある。主演のローレン・バコールとグレゴリー・ペック、および監督ヴィンセント・ミネリの簡単な経歴と、本作がオリジナル脚本部門でジョージ・ウェルズがアカデミー賞を受賞したごとが分かる。ただミネリの生年が1910年と記載されているが、1903年の誤り。

テクニカラーの色彩が最大限に再現されているとは思えないが、画質とカラー・バランスはまず及第点といえる。ヘレン・ローズによるカラフルな衣装の数々を堪能することは充分に可能だ。目立った傷なども見られず鑑賞には問題ない。字幕は7カ国語（英語、仏語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、タイ語、韓国語）に加えCCも収録。画面サイズは、スクイーズ収録、ワイドサイズ(1:2.35)である。なお、パッケージにはリージョン1と記載されているのであるが、実際にはリージョン2のプレイヤーでも鑑賞可能であることを改めて書きそえておく。

ドルビー・デジタル・モノラル。音声は、英語オリジナル版と仏語吹き替え版の種類2種類が収録されている。オリジナル版も仏語版ともに、とくに聞き苦しい点はない。モノラルであるから、現在の新作に比して臨場感には乏しいかもしれないが、アンドレ・プレヴィンの華麗なサントラなどは問題なく楽しめるだろう。