The Boondock Saints: Unrated Special Edition (1999)
(処刑人）

＜作品データ＞
リージョン： 1
制作： Fox
映像仕様： 4:3, LBX
音声仕様： Dolby Digital 5.1 Surround EX (English)
作品時間： 110分
画面比率： 2.35:1
CC： Yes
字幕： English,Spanish

アイルランド人の祝日・聖パトリック・デーの夜。サウスボストンの精肉工場で働くコナー・マクナマス（ショーン・パトリック・フラナリー）とマーフィー・マクナマス（ノーマン・リーダス）の兄弟は、馴染みのバーでロシア系マフィアと激しい殴り合いのけんかをしてしまう。翌日、彼らの住むアパート脇の路地裏でマフィアのメンバー二人の遺体が発見された。調査に当たったFBI捜査官のポール・スメッカー（ウィレム・デフォー）はマクナマス兄弟の犯行をつきとめるが、自首してきた彼らの正当防衛を認めて無起訴とする。
留置所で一夜を過ごしたマクナマス兄弟は、そこで「悪を滅ぼし、善を栄えさせよ」という神の啓示を受ける。その翌日、マクナマス兄弟はマフィア幹部が集まる会合へ乗り込んでゆく・・・。

1999年に製作された低予算映画「処刑人」は、アメリカ国内ではごく僅かの映画館で上映されたものの全米公開されることなく、ほぼ「ダイレクトDVD化」の形で2002年5月にFOXから米国盤DVDが発売となった。（同エディションは廃盤になっている）DVD発売後は口コミで評判が広がり、個性的な俳優陣とタランティーノ作品ともしばしば比較されるスタイリッシュなバイオレンス映像でファン層を拡大。近年稀な未公開カルト作品と呼ばれるようになった。その人気ゆえに作られた本作の製作ドキュメンタリー映画「Overnight」は2003年〜2004年にかけて各映画祭に参加、2005年には米国盤でDVDリリースされた。
そして、2006年5月に本2枚組「処刑人」Unrated Special Edition（無審査特別版）が登場。その発売に合わせて限定リバイバル上映も行われ、まさに異例の注目度であると言える。

本作の大きな魅力はキャスティングだろう。神の啓示に従って悪人達を始末してゆく「処刑人」兄弟を演じているのは、TVシリーズ「ヤング・インディ・ジョーンズ」シリーズで注目されたショーン・パトリック・フラナリーと、「ミミック」で美少年ぶりが目を引いたノーマン・リーダス。抜群のルックスで息の合ったコンビを見せる二人の姿は、凄惨な銃撃シーンも爽快にすら感じさせてしまう。加えてあのウィレム・デフォーが彼らに感化されてしまうFBI捜査官役で出演。たがが外れたような熱演ぶりと女装姿はあまりにも強烈な印象を残す。また、コメディアンであり、ミュージシャン、司会者としても活躍しているイギリスのビリー・コノリーが終盤に登場し、犯罪史上最悪の謎めいた殺し屋を演じている。

本作がデビューとなったトロイ・ダフィー監督が自ら手がけた脚本は、巧みなカットつなぎ、スローモーションを活用したスタイリッシュなアクション・シーンを織り交ぜて思わずのめり込む展開を見せる。特に冒頭でロシア系マフィア殺人事件の真相を描いたシークエンスの緊張感はすごい。そして、本作の根底にある人々の暴力犯罪への無関与に対する批判は、映画の冒頭で神父がキティ・ジェネヴェーゼ殺人事件（＊注）を引用していたり、市民へのインタビュー映像をドキュメンタリータッチで挿入してラストを締めくくっていることでも明確だろう。

今回、旧エディションよりグレードアップして登場したUnrated盤は、思わず所有欲をそそるスリムなスチール・ケース入り。ケースにはマクナマス兄弟が身に付けている十字架のエンボス加工がほどこされている。
気になる本編だが、旧エディションの「R指定版」（18才未満は保護者の付き添いが必要）から「Unrated版」（未公開版、インディ作品、外国作品などに多いレーティング指定を受けていない無審査版）になったことでは流血表現などが追加されているのみで、本編時間に変化はなく内容の違いも目立つものではないが、DVDクオリティーは格段に向上している。THX認証のアナモルフィックにリマスターされた映像、5.1chEXの音声。さらに本DVDには一方の面にフルスクリーン盤の本編も収録されているからコアなファンはこちらも必見だ。（フルスクリーン盤とワイドスクリーン盤の画面比率の違いについて詳しくは、「ブロークバック・マウンテン」のレビューを参照）

（＊注）1964年、ニューヨークの自宅付近で28才の女性キティ・ジェネヴェーゼが暴漢に襲われ、隣人達は事件に気付いていながらも誰一人助ける者はなく、ナイフで繰り返し刺されたことが致命傷となって死亡したという痛ましい事件。

特典収録の多くは旧エディションと同じものだが、新たにビリー・コノリーによるコメンタリーと、DVD-ROM収録のシナリオが付いている。

Disc#1:

Audio Commentary With Writer/ DirectorTroy Duffy: トロイ・ダフィー監督によるコメンタリー。撮影裏話満載。
Audio Commentary With Actor Billy Connolly: ビリー・コノリーによるコメンタリー。スコットランド出身のビリー・コノリーは、独特のアクセントで楽しい話を盛りだくさんに届けてくれる。

Disc#2:

Deleted Scenes: カットシーン7つ、約19分。ショーン・パトリック・フラナリーとノーマン・リーダスの入浴シーン有り。
Outtakes: NG集。約1分30秒。
Trailers: 「処刑人」「ドニー・ダーコ」の予告編。
Filmographies: ノーマン・リーダス、ショーン・パトリック・フラナリー、ウィレム・デフォー、トロイ・ダフィーのフィルモグラフィー。
The Boondock Saints Script: 完全シナリオ（DVD-ROM)

特典映像には字幕収録はない。

2.35:1アナモルフィックの映像は、非アナモルフィックのレターボックス収録だった旧エディションとは見違えるほどのキレイな映像で蘇った。特に全体的なシャープ度とディティールの緻密度の差は大きい。旧エディションでフォーカスが甘かったために見ずらかった部分も大幅に改善されている。画質がこれほど良くなると作品自体もグレードアップしたかのように感じられるから不思議だ。
字幕は英語、スペイン語、英語クローズド・キャプションを収録。

英語5.1chEX音声は、低予算映画独特のフラットな感じは否めないが、アクションシーンでサラウンドが活躍する。ドラマ部分はセリフがクリスプでよく通る声質。オペラやクラシック音楽を活用したサントラは少々大げさに響き渡りながら、ウィレム・デフォーの変態ぶりを盛り上げてくれる絶妙な効果あり。