The Hunt For Red October: Special Edition (DTS) (1990)
(レッド・オクトーバーを追え！）

＜作品データ＞
リージョン： 1
制作： Paramount
映像仕様： LBX
音声仕様： DTS/Dolby Digital 5.1 Surround (English)
作品時間： 135分
画面比率： 2.35:1
CC： Yes
字幕： English, Spanish

ソ連から一隻の戦略潜水艦・レッド・オクトーバーが出港した。核ミサイルを塔載し、キャタピラー・システムによってソナーでも探知することのできない最新鋭原子力潜水艦だ。そのレッド・オクトーバーが航海中に突然姿を消した。不振な潜水艦の行動をいち早く知ったCIAアナリストのジャック・ライアン（アレック・ボールドウィン）は、即座に調査を開始。一方、ソ連軍は太平洋に大規模な艦隊を展開し、緊迫するアメリカとソ連。一触即発の事態に、ジャック・ライアンは自らの分析を元に単身レッド・オクトーバーを目指す。

トム・クランシーによる同名小説を映画化したジャック・ライアン・シリーズ第一作。アクション映画の代表格である「ダイ・ハード」のジョン・マクティアナン監督が本作品でも才能を発揮。「スピード」で監督を務めたヤン・デ・ボンのダイナミックな撮影技術もさすがだ。しかしこの作品はアクションよりも、様々な立場の人々による戦略を描いたポリティカル・ドラマとして飛び抜けた面白さがある。

ある計画を企てているレッド・オクトーバーのラミウス艦長（ショーン・コネリー）と数人の部下たち。それを密かに妨害しようとする艦内の工作員。艦長ラミウスに接触すべく、米海軍潜水艦ダラスに向かうジャック・ライアン。自らの任務遂行を徹底するダラスの艦長。レッド・オクトーバーを撃沈すべく追い続けるソ連軍の潜水艦。地上でお互いの腹のさぐり合いを続けるのは、米国国家安全対策部と駐米ソビエト大使。

レッド・オクトーバーの本当の狙いは何なのか？前半、お互いの思惑を探りながらの見えない駆け引きが続く。刻一刻と変化する状況下、推理だけを頼りに進行するあのスリル感がたまらない。一つ間違えば全面戦争への引き金となる事態、それぞれの立場の思惑を、描く部分と描かない部分とで巧みに使い分けた脚本は、見る側に常に推理をさせ、気を緩める隙も与えない。そして、物語は後半で一気に展開し、クライマックスへ！

こうした壮大で緻密なドラマを支えているのが、ライアンが最後まで失わなかったラミウス艦長への信頼である。面識こそ一度きりではあるが、偉大なラミウス艦長の人物像を自ら研究したライアンだからこそ持ち得た信頼感。命がけでレッド・オクトーバーを目指すライアンに、非常な説得力があるのはそのためであり、この作品の人間ドラマをより深いものにしている。その辺りがジャック・ライアン・シリーズでは常に人気ナンバーワンである所以だろう。

特別収録は、ジョン・マクティアナン監督によるコメンタリー、約29分のドキュメンタリー"Beneath the Surface - New Cast & Crew Interviews"、劇場予告編。コメンタリー・トラックでは、決して饒舌ではない監督がゆっくりとした口調で、前半は主に映画製作の技術的な要素について語り、後半は出演者についてや、小説を映画化するに当たっての問題点などについて言及している。ドキュメンタリーでは、小説家トム・クランシーを見出して映画化の権利を得るに至るまでの経過、キャスティング（当初はケビン・コスナーがジャック・ライアン候補だった）、現実の潜水艦でのリサーチ体験談、撮影時の様子などが、ジョン・マクティアナン監督、アレック・ボールドウィン、ショーン・コネリー、主要スタッフによって語られている。また、ミニチュア潜水艦にスペシャル・エフェクトを加えるILMの裏側、潜水艦のセットの様子などを含め、あまり長くはないが情報量が多く、英語字幕付なので必見だ。未公開ドキュメンタリーということになっているが、中には古いインタビュー映像もあると思われる。

前回のリリースはレターボックス収録だっただけに、今回のアナモルフィック・トランスファーは嬉しい限り。デュアル・レイヤーの本DVDは、期待通りの良質な映像に仕上がっている。色彩は鮮明で申し分なく、黒の深みと陰のグラデーションも平均点以上。最近の作品に多い、非の打ち所のないシャープな映像に見慣れてしまうとややソフトに感じるシーンもあるが、圧縮によるノイズやその他のノイズは見られず、前回のリリースから比べると格段に向上しているのが分かる。
字幕は英語字幕とスペイン語字幕を収録。

音声は、英語5.1ch、英語DTS、仏語ステレオを収録。待望のDTSは作品後半でストーリーが大きく展開するにつれ、待ってましたとばかりにサラウンドの迫力が生きてくる。ヘリコプターからダラス潜水艦に飛び移るシーンや、レッド・オクトーバーがミサイルを避けて急転換するシーンで轟音のサラウンドは手に汗握る興奮度。臨場感たっぷりの音響空間を生み出す。限界こそあるものの、潜水艦の出す超低音も存在感がある。やはりこの作品はDTS音声に限る。